屋久杉は屋久島の標高500mを超える山地に自生するスギ。
このうち樹齢1,000年以上のものを指す。
(樹齢1,000年未満のものは「小杉」と呼ぶ。)
日本ではこの、長寿を象徴する屋久杉ファンが多く、建築や家具に珍重されています。
地域による嗜好もあって、主に西日本で人気があります。
九州の材木屋や家具メーカーがこの材を使って製品を作っています。
同じように、伊豆の島々に自生する「島桑」も日本の銘木中の銘木ですが、
関東好みで、不思議と関西では人気がありません。
もっとも、数量としたら、屋久杉の比ではないので、あまり知られていないのでしょう。
ほんの一握り、島桑狂いのような人のための、幻の材には違いないのですが。
この屋久杉ファンのお客様がいて、李朝シリーズのスクリーンを、
屋久杉を使って作って欲しいと依頼されました。
杉材は針葉樹のため、やわらかく、明るい色合いが特徴で、どちらかというと数寄屋風。
一方、李朝は、純和風というより大陸的な風貌で、民芸色が強い。
はたしてどんな雰囲気のスクリーンが出来あがるか、興味がありました。
背の高い方なので、若干高さを増やした以外、まったく同じデザイン。
使用した和紙も、李朝シリーズと同じ、スサの多い越前手漉き和紙。
にもかかわらず、こうも印象が違う物かと驚きました。
上品で、公家さんのような、はんなりとしたイメージの家具。
家具を送付して翌日、お客様から電話がありました。
「李朝のスクリーンが、こんな優しい和風の家具になるなんて。
まるで昔からここにあったような懐かしさがあって、びっくりしました。」
「ありがとうございます。職人は、屋久杉に惚れ込んで、楽しみながら製作したようですよ。
新しい材を提案していただいて、感謝しています。」
もの作りをする者は、お客さまに導かれて、新たな製作意欲が沸いてきます。
新しい素材、新しいデザイン、新しい技術。
優れた職人は、常にチャレンジ精神をもって、未知なる分野を切り開いていくものです。
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