家具おもしろ話(吉蔵オーナーコラム)

家具

2019.11.07

今年の新宿展、終わってみると・・・

 「静岡市の特産品・東京展示会」いわゆる新宿西口の
イベント広場で行われる物産展は今年で16年目を迎えた。
「吉蔵」はその2回目から続けて出展し、
この展示会の特徴やお客様の傾向を長年見てきた。

最初の数回はこういう展示会が珍しかったのだろうか?
数十万円もする家具や仏壇が3日の期間中に何度か売れたことがあった。

10回を過ぎるころからお客様も慣れたのだろうか、
あまり大きなものを求める方が少なくなった。
売れ筋は5000円以下、弊社の場合、一日10万円の売り上げが目標だった。

さて、今年は・・・。
10月9日(水)のオープンは例年並みに推移したが、次の日の10日。
猛烈な台風19号が東海関東に接近するというニュースでもちきりになり、
会場も何となくモノを買うという雰囲気ではなくそわそわしている。
案の定、中日は空振りだった。



3日目最終日11日、
翌12日土曜日には台風が接近するということで、
店じまいの片付けも1時間ほど早く、4時終了ということになった。
こんなにお客様が少ない展示会は今までになく、
実際集計すると売り上げは過去最低を示していた。
おまけに帰りの新幹線は超満員、予定のひかりに乗れず、
大変な思いで帰宅した。

ただ、最終日何人かのお客様から色々な相談を受けた。
・棚の中に収める小さな厨子が欲しい。
・神道だけれどどうしたらいいか。
・母親が小さい仏壇を探している。
・・・・そういった要望や問い合わせに一つ一つ答え、後日連絡するケースがあった。

そして、そのうち2件の引き合いが現実に商品の販売、制作に繋がった。
今まで、その時相談があっても多くは立ち切れになる場合が多い中、
今年は期間中の売り上げの3倍ほどの金額の契約が10月後半になって決まった。

展示会中は厳しかったけれど、後からの話が決まって一安心。
毎年楽しみにして下さるお客様も多く、
やはり新宿展は長く継続していくことが大切だな、と思った次第です。

2016.01.18

夢見る家具/森谷延雄の世界

 三越展示会搬出の日。
閉店時間(午後7時)までには間があるので、前からみたかった
大正時代の家具デザイナー「森谷延雄」氏の展覧会へ行ってきました。

森谷延雄(1893-1927)
関東大震災を境に大正・昭和を駆け抜け、モダニズムあふれる個性的な家具を発表。
・室内が美しい詩を物語ってくれる家具を作ること。
・貴族の奢侈品でなく、中流家庭のための上質な普及型洋家具を作ること。
・日本における西洋型暮らしを勧めるべく、西洋家具史を研究すること。
上記の3つの夢を、わずか33年の命のなかで成し遂げた。
大正デモクラシーの文化が生んだ、詩人のような家具デザイナー。

玩具やお伽話のすきな子供心の私には、
其のお姫様の室を作って見たくなったのです。
ネムレ、ネムレ、の歌のまゝに。


飽食の時代の、雑貨な頭からは決して生まれない、純粋なデザインのチカラ。
雑念が消え、不安が解かれ、汚れなき世界に引き込んでいく家具の魔力。
鳥影が映る日本紙の張られた障子に春の光が當たっております。
影をなゝめになげかけた小鳥が、
長押の枝の上に憩っております。


自分の命と愛の全てを、家具に捧げてしまった男。
ビジネスなんて言葉のかけらも聞こえてこない、桃源郷を家具で表現した男。



もし三々九度の盃を載せるあの朱色の臺で食事を取ったら
一体どんな気持がするだろうか」という遊戯心。
小さい歌の気持でさう云ふ食事室を作って見度く成ったのです。


夢見る頃を過ぎても、夢見る男の残り香が漂っている、森谷延雄の家具の世界。
もうこれは、趣味としての家具の真骨頂。
そうなんですよね。
これって家具の理想的な姿なんですよね。

三越百貨店の家具売り場の中にある、「吉蔵」の家具を見て思う。
李朝の美にすっかり魅せられて、
日本人の李朝家具を創作したいと燃えていたあの頃。
夢見る男は、時代に惑わされることなく、
自分の抱いた家具の夢を、追い続けることが出来るだろうか?

(画像は「夢見る家具展」図録から借用しました。)
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