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家具おもしろ話(吉蔵オーナーブログ)

2016.06.15

KAGUメッセは何処へいく?

4年前(2012年)の今日(6/12)、facebookの中で、
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kittsan流ブログ 2012年6月12日 「KAGUメッセは何処へいく?」

シズオカ家具のビックイベント、「シズオカKAGUメッセ」が終了しました。
前半の業者向け、後半の一般向け、
ご来場いただいた多くの皆さま、ありがとうございました。

業者向けの三日間。ゆるりと始まったメッセは来客数が分散したようです。
東京でインテリアライフスタイル展があったためか、それと掛け持ちの業者が多い。
午前中のいっときの混雑で、後は浪が引いたように静か。
静岡特有の「待ち」の展示会がここ何年も続いています。

それでも、「吉蔵」ブースで展開した「新しい祈りの家具とシーン」の試みは、
何人かの業者の方に関心を持っていただいたようです。
県知事賞を受賞した「厨子コンソール<ムゼウム>」には
大手の業者さんからオファーがありました。
「掌の厨子」はもう珍しいものではなく、インテリアショップが扱ってくれています。
東京のデザイナー集団からオリジナル厨子の依頼もありました。
仏壇に代わる、新しい「祈りのインテリア」の市場は確実に変わりつつあります。

一日空けて、後半の週末二日間は一般向けの公開日。
初日土曜日、雨の天気予報なので、お客様の入りを心配しましたが、
開けてビックリ、オープニングからお客様の入場が続々と続く。
午後になっても、夕方になっても、波はそれほど引いていかない。
2日目も同様の賑わいで、結果、昨年の倍以上の来場者があったそうです。

「吉蔵」ブースもてんてこまい、あちらの方に一言、こちらで一言、
「カタログはこれだけですか。」
「このアクセサリーをお願いします。」
「この厨子はお一人様用ですか?」
「○○宗なんですけれど、どれがいいんでしょう?」

妻と私は声を枯らして、家具の説明とカタログ配りに追われまくり。
300枚以上用意した資料は2日目半ばで消えてしまいました。
今さらながら、準備不足と説明不足を悔いるばかりでした。

ある出展メーカーの人が言っていました。
「業者の人は、自分が何を売りたいのか解っていない。
 それがなければ、世の中のトレンド情報を探しに来たって見つからない。」
「一般消費者のほうが反応が早い。欲しいと思うものには徹底的に食いついてくる。」

何時までも変わらない、売りたい買いたい物のない、業者対応の「シズオカKAGUメッセ」
一般消費者が、インテリアの何かに期待しながら大挙押し寄せた「シズオカKAGUメッセ」

この落差を、この分断を、私たち主催者はどう考えたらいいのか?
確実に、今年の展示会は、そのターニングポイント。
来年は? 再来年は? 続けるのか? やめるのか?

7000人以上の、インテリアに関心があり家具に関係している人達を取り囲み、
今日から明日への、賢い購買層に育て上げていく事が出来なければ、その意義はない。

半世紀以上続いている、伝統の「シズオカKAGUメッセ」はこれから何処へいくのだろう? 

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あれから四年。
今年の業者さんの波は凪(なぎ)状態で来場者10%以上の減。
一般家具愛好家の波は繰り返し繰り返し今年も打ち寄せました。

ただ、今思うことは、
他県の業者にとってメッセに「核」となる魅力的なものがないと
わざわざ交通費を払って静岡へは来ないということ。
一般ユーザーの方もより賢く、デザイン・機能・価格などの
要素をチェックし、買う買わないを決めるということ。

人をどうこう言うより、自分がどうしなければならないのか?
そういう問題をさらに突き付けられた今年のメッセでした。

2016.04.29

関保雄著「江戸指物」/貴重な和家具の本

「 木の温もりと手の温もりの出会い。
  江戸指物 ー それは
  東京下町の生活に根ざした 
  何よりも職人たちの”手”による
  木工和家具類である 」

関 保雄著「江戸指物 ー 下町職人の粋と意気」(淡交社)・・・帯の紹介文より

著者の関保雄さんは上野池之端の和家具屋「京屋」の番頭さんをしていた人で、
指物家具職人、指物愛好家の間では知らない人はいないでしょう。
学者ではなく、商売人の著者が、日本の木工指物の盛衰を実体験から語っています。

箪笥、鏡台、厨子、飾棚などの箱物から下駄、箸などの小物まで、
職人の手仕事による生活用具を掲載。
指物家具で珍重された国内の木材、職人の工具、指物技術(仕口)の説明。
語り継がれる歴代の江戸指物師のこと。
少ないながらもプライドをもって技を磨く若手指物職人のこと。
そして、江戸町人が育てた粋の文化の変わりゆく様。

数々の貴重な図面やスケッチとともに、江戸指物の世界のすべてを紹介しています。
おそらく、世界最高の木工技術と評価される、
日本の指物家具の世界を紹介した、唯一の本でしょう。


実はわたしはこの本を、最近やっと手に入れました。
ずっと前から(1996年発刊)あったので、現在も書店にあると思ったら、
とっくに廃刊になっていたようです。

取引先の社長さんが二冊持っていたので、好意で一冊譲ってもらいました。
その後、出版社、著者、知り合いの職人さん、家具屋さんなど、
幾つも問い合わせてみましたが、ありません。
アマゾンの中古本では、数倍の値段が付いていました。
島桑ファンのイギリスの教授にプレゼントしたくて、今も探しています。

江戸指物や京指物は、そのままでは美術館入りになってしまいます。
しかし、垢抜けたデザインや小振りのサイズなど、参考になる点が多くあります。

存在感を強調するような欧米の家具とは違う、
粋で控えめな佇まいのこれらの家具のエッセンスを、
もっと今日の暮らしの中に生きる家具にリニュアルしていくにはどうしたらいいか。
以前からず〜っと模索しています。

 

2016.04.19

正倉院「黒柿両面厨子」にあった合板の技術?

 9月17日から始まる「吉蔵・秋の室礼展」に向けて、
厨子の資料を捜していたら、こんな面白い記事がありました。

 

 

「正倉院に納められている「黒柿両面厨子」は木工家にとって、注目の的ですが、
どうも合板技術が使われているらしい。
天板、地板とも、7枚の黒柿薄板を合わせて、狂いや割れを防いでいる。」
「へ〜、そんな昔に今で言う合板の技術があったんだ。」と驚いたのですが、
どうも著者の間違いで、一枚板ではなく、七枚の黒柿細板を並べて、はいである事のようです。
 
 
 
 
ところが、木象嵌の細工が美しい「紫檀木画双六局」は、
天板の構造が、芯材の表面に紫檀の板を貼って作られているという。
これこそ、まさしく合板そのもの。
やっぱり、遠い昔、無垢材の反りやひねりをどう調整するか、知恵を出していたのですね。
  
薄く剥いた板を木材などの表面に接着する手法は、
すでに、B.C.1500年代古代エジプトで行われていた。
その手法はローマ時代、ルネッサンス時代に受け継がれ手工業的工法で家具やドアなどをに利用。
1880年代頃にはいまのベニヤ板のように工業化されていたとされている。
(日本合板工業組合連合会による) 
 
今でも、一枚板、無垢材を信仰としている木工愛好家が多々います。
無垢が本物、合板はニセモノと、客の前で公言している人さえいます。
でも、そういう人ほど、木が反ったり割れたりするのは自然だからと、うそぶく。
残念ながら多くの人が、無垢材を扱う長い経験を持たず、技術を知らないからです。
 
正倉院宝物の合板技術に見るように、
板(木が反るとかく)の問題点をどう克服したらいいか、すでに研究されていた事実。
機械で切ったまま、微調整という手仕事が出来なくなっている、現代木工職人の風潮を見るようです。
特に静岡は、合板を利用する合理的な指物技術が伝承されてきました。
無垢だけに拘らず、多様な木の使い方を考えたら、もっと可能性が広がると思います。
    

2016.03.22

島桑の和針箱

「吉蔵」の島桑指物家具の中で、和針箱は今でも人気があります。
江戸指物の定番であります。
そして、指物家具の技術で基本となるのが和針箱の製作です。



30数cm四方の四角の箱の中に、やらなければならない仕事がどっさり含まれています。
静岡の職人さんは針箱が得意でした。
だから、静岡には高い指物技術があるのです。


まず、抽斗(ひきだし)。
5つの抽斗の大きさが全部違います。
そして、島桑のような高級材を使う場合、
前板を島桑の薄板で囲む(ひもといいます)仕事が普通です。


天板は三味丁番で中折れ(真ん中で分かれる)方式になっています。
その中に、和裁縫に必要な、糸巻き(3枚)、針山箱、くけ棒(布を挟む金具を付ける)
を納めたカケゴ。
そしてカケゴの奥に隠し箱が挿入されます。
それら多くのパーツを職人さんが一人で全部作ります。

引き手金具もオーダーの一文字型。丁双(丁番)も三味線のデザイン。(今は廃盤)
東京の和物金具屋さんに古い型を起こしてもらいました

我が家でも、母の婚礼品として祖父吉蔵が製作した島桑の針箱があります。
「桑は化ける」といいますが、当初の山吹色がやがて渋い鼈甲色になっていました。
和裁をする人が少なくなった今日、和針箱は過去のもののような気がしていました。
しかし、最近でも時々問い合わせがあり、製作しています。

amazonの中古市場で見つけた、貴重な絶版本「江戸指物」と一緒に、
その一つがイギリス・リバプールの教授、B氏のところへ送りました。


島桑指物 尺二和針箱
 サイズ  間口36cm・奥行き22cm・高さ29cm
 材質 島桑材・桐材(抽斗内部)
 参考価格  ¥120,000(税別)

2016.01.18

夢見る家具/森谷延雄の世界

 三越展示会搬出の日。
閉店時間(午後7時)までには間があるので、前からみたかった
大正時代の家具デザイナー「森谷延雄」氏の展覧会へ行ってきました。



森谷延雄
(1893-1927)
関東大震災を境に大正・昭和を駆け抜け、モダニズムあふれる個性的な家具を発表。
・室内が美しい詩を物語ってくれる家具を作ること。
・貴族の奢侈品でなく、中流家庭のための上質な普及型洋家具を作ること。
・日本における西洋型暮らしを勧めるべく、西洋家具史を研究すること。
上記の3つの夢を、わずか33年の命のなかで成し遂げた。
大正デモクラシーの文化が生んだ、詩人のような家具デザイナー。

玩具やお伽話のすきな子供心の私には、
其のお姫様の室を作って見たくなったのです。
ネムレ、ネムレ、の歌のまゝに。


飽食の時代の、雑貨な頭からは決して生まれない、純粋なデザインのチカラ。
雑念が消え、不安が解かれ、汚れなき世界に引き込んでいく家具の魔力。

鳥影が映る日本紙の張られた障子に春の光が當たっております。
影をなゝめになげかけた小鳥が、
長押の枝の上に憩っております。


自分の命と愛の全てを、家具に捧げてしまった男。
ビジネスなんて言葉のかけらも聞こえてこない、桃源郷を家具で表現した男。


もし三々九度の盃を載せるあの朱色の臺で食事を取ったら
一体どんな気持がするだろうか」という遊戯心。
小さい歌の気持でさう云ふ食事室を作って見度く成ったのです。


夢見る頃を過ぎても、夢見る男の残り香が漂っている、森谷延雄の家具の世界。
もうこれは、趣味としての家具の真骨頂。
そうなんですよね。
これって家具の理想的な姿なんですよね。

三越百貨店の家具売り場の中にある、「吉蔵」の家具を見て思う。
李朝の美にすっかり魅せられて、
日本人の李朝家具を創作したいと燃えていたあの頃。
夢見る男は、時代に惑わされることなく、
自分の抱いた家具の夢を、追い続けることが出来るだろうか?

(画像は「夢見る家具展」図録から借用しました。)

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